放送対局だと、ツモを手牌の上に乗せる人がいます。
・・・となるのはMリーグから見始めた新規ファンの考えで、古くから放送対局を見ているファンは逆に「最近ツモを手牌の上に乗せなくなったな?」となっているのではないでしょうか。
一昔前、MONDOの放送が主流だったときは全員ツモを上に乗せていました。
その名残で各団体の古参プロや、放送対局が多かった連盟のプロは現在でも乗せる人が多いですね。
Mリーグで一番やるのは勝又プロや佐々木寿人プロあたりでしょうか。
私も昔はこれが実戦でのマナーだと思って乗せてた時期もあったりします。
Mリーグから入った人は手元にロン牌持ってきたりするのと同じで、映像の拡散力ってすごいですよねえ。
んでもって実戦でやる必要がないことに気づいた私は、これを視聴者にツモをわかりやすくするためだと思っていました。
実際『麻雀 ツモ 乗せる』などのワードで検索すると、一律で放送対局でツモ牌をわかりやすくするためと解説されており、通説といえます。
でも見てた人ならわかると思うんですが、この行為って磁石の関係で牌が手牌の上でクルッとなって3人に晒されてしまうんですよね(最近あんまりそうならなくなっている気がするので、作りが変わったのかな?)。
なのでリスクがありながらも視聴者のためにやっているんだなあと。
手牌の上にツモを乗せることの答え
しかし先日亡くなったバビィこと馬場裕一氏の著作『馬場裕一の見た夢』にその答えが書いてありました。
馬場は馬場氏、黒木は黒木真生氏です。
馬場 たとえばツモ牌を上に載せるのは、スイッチャーさんという、カメラを切り替えるスタッフさんが分かりやすいようにしているんだね。パっと見て、手牌が13枚か14枚かわからないし、実況を聞きながら顔を映したりもするから、スイッチャーさんも手元ばかりは見ていられないんだ。ただ、最近はツモ牌を上に載せないことが多いけど、なにか理由はあるのかな。
黒木 スタッフ、特にスイッチャーさんが慣れてきたということでしょうかね。どこの現場に行っても、同じスイッチャーさんが長年やられているという印象です。
馬場裕一の見た夢 P160-161より
というわけでツモを上に乗せるという行為は視聴者のためではなく、製作側の都合だったのですね。
でも言われてみれば確かにという感じで、手牌の上に乗せるのはマナーじゃないですが、切るまでツモを手牌に入れないというのは誰しもが守る共通ルールなんですよね。
すなわち一般ユーザーと同じくツモ牌が利き手側の端にあるのは明白なので、視聴者への配慮とは言えないのです。
立ち返ってみればなるほどとなった文章でした。
馬場氏のこの著作は自身の自伝ともいえる作りになっています。
当時の麻雀における情勢を振り返りながら、その時代に自身はどういう状況だったのか、どう思っていたのかということを綴っています。
プロでありながらずっと第一線で麻雀メディアの先頭に立っていた氏の情報はもう現在では同じレベルで知り得ていた人がほとんど残っておらず、なおかつ形として残していただける唯一の人物だったといえるでしょう。
その機会を活かし、このように当時を知ることができる資料としてに遺していただくことができたのは、本当にありがたい限りと思って読んだ次第でした。