麻雀をはじめ、ギャンブル漫画において賭けるものは決まっています。
それは大金か命です。
ミステリが殺人でなければ成り立たないように、失うものが究極でないとエンタメは面白くないということなのでしょう。
デスゲームは命を賭けるからデスゲームなのです。
一般的な雀荘で打つ人がノーレート麻雀を打つ人に向かっていう決まった文句があります。
それは「賭けてないと真剣になれねえ」という言葉です。
これに関しては言いたいことはわかるのです。
赤の他人のオッサンたちが数時間ゲームで遊ぶには、一定のリスクを負い合っている状態でないと面白くないと。
1回1時間弱の浪費するにあたって、テキトーに打つなという足かせが難しい以上、その行為がむしろ嬉しいくらいでないと釣り合わないのですよね。
人生が変わる対局という最高のエンタメ
おととい、風林火山オーディンションの最終戦が放送され、永井孝典プロが優勝しました。
一井プロがリードを保って突入した南場、2度も直撃できたのが勝因だったのは言うまでもありません。
その直撃のたび、スイッチャーが一井プロの歪んだ顔を抜きました。
後悔、失望、手中にあった未来が滑り落ちていく絶望・・・いろんな感情がその顔には詰まっていました。
現代の麻雀プロにおいて、Mリーガーになるということは麻雀で飯を食うステージに立てるということ。
プロになったからにはタイトル獲得などの夢を掲げているのでしょうが、それよりもなによりも麻雀プロ一本で生活したいという夢が誰にとっても一番大きいでしょう。
誇張ではなく、人生がかかった対局。
そして勝者が生まれるとき、敗者が生まれる。
それが織りなすドラマを我々が見たいのです。
我々は法律において、ノンフィクションで大金を賭けて麻雀を打つ人を見ることはできません。
命を賭けてなんてなおさらです。
でも、そのくらいのものを賭けているノンフィクションが見たいのです。
それが今だとMリーグのオーディション以上のものはないと思います。
カイジの鉄骨渡りの観客として自分のゲスな感情をエンタメとして消化させるのとともに、ひとりの人生が変わる瞬間に感動をした次第でした。